著者とあるが、実際には二人の対談集。副題に”共感が「お金」になる時代の新しい生き方”とついている。
手段であるお金が目的となり、振り回される現在
もともと金融の世界にいた新井氏は、あまりにお金中心で、お金に振り回されている現代社会に対して、"お金って何なのだろう"という問いに立ち返ったという。そうしたところ、お金は貯めておけるので、いつしかお金をもっと増やす、 もっとたくさん貯めることが目的となってしまい、手段としてのお金が目的になってしまうという逆転が生じたということに思い至った。
貯めておけないお金eumoを通じて縁を作る
この気付きをもとにして、eumoという通貨を作ったという。eumoの最大の特徴は貯められないこと。決済専用だそうだ。これを通じて出会いを仲立ちし、縁を作る実証実験を行っている。
仲立ちするのは生産者と消費者。生産者が売りたい相手を選ぶことができ(eumoに共感した消費者)、 消費者は生産者の顔が見える(文字通りその場に行かないと買えない)。実際に生産者のいるところに出向くことでつながりができるという仕組み。eumoでしか買えない商品もあるという(京都府宮津市の希少な米酢や、奇跡のリンゴで作ったリンゴ酢など)。
未来のために今を犠牲にする必要はない
高橋氏は食で社会を変えていこうと活動してきた方。高橋氏は今を生きることを大切にすべきだと述べている。豊かになった日本では、未来のために今を犠牲にして我慢する必要はないという。未来のために貯めるということができない eumoは高橋氏の考えにはまるようだ。生産者と消費者を直接つなぐのにeumoが手段としても使える。
台風19号の際にみられた共感資本社会
地方の生産者と都市の消費者のつながりが深まり、消費を通じて関係人口となれば、地方にも新しい可能性が 生まれる。
実際、台風19号の被害を受けた地方の生産者に対して、都市などの消費者からの支えが共感資本社会の実例として示されている。
eumoの試みはまだまだ小さい。利用者は800人強、決済金額は200万円程度だそうだが、これからどれだけ広がりを見せるのか、どれだけたくさんの出会いや縁を紡いでいくのか、関心を持って見守りたい。ていうか、アプリをダウンロードすれば自分も実証実験に参加できます。
共感資本社会とアーリーリタイアメント
アーリーリタイアメントの可能性を考えるにあたり、経済的な自立を確立することが不可欠だと考えてきた。 どれだけの資産を形成し、どれだけの利回りで運用し、どれだけのペースで消費し、資産を取り崩すことになった場合の資産寿命はどれだけあれば大丈夫か、こんなことばかり考えて計画を立ててきた。いわゆる人生逃げ切り型といえようか。
こういう考えに凝り固まっていると、”もっとお金を”という考えから脱却するのは確かに容易ではない。しかし、お金だけではない、人と人とのつながりが大切なのだという考えにも共感する。高橋氏は都市と地方という切り口で語っているが、それでも地方の濃厚な関係をすべて肯定しているわけではない。地方においても新しい関係というものがあるべきだと述べている。共感資本社会における 人と人とのつながりの在り方を自分なりに考えたい。
今と未来、両方大事
ただ、すでに豊かになったから未来のために今を犠牲にすることはない、というところはひっかかった。 今に満足して今を大切に生きるのは、一期一会に近くてその事自体を否定するつもりはない。ただ、今に満足して安住してしまうとそこからは進歩が生まれず、世界から取り残されかねないことが怖い。
自分が競争を否定しても、より大きなスケールの競争には否応なく巻き込まれてしまう現実がある。今を大切に生きる。今の満足度を高めることで社会がより高いレベルへと至り、その結果よりよい未来を拓くということができればそれでいいのだが。