原著は2011年、日本語版は2014年に出版されたやや時間が経った本である。しかし、企業にとって普遍的なテーマを扱う同書の内容は今も古さを感じさせない。
同書は組織にあって連続的にイノベーションを起こす人材=「シリアル・イノベーター」を調査し、分析したもの。シリアル・イノベーターは技術開発も顧客価値の創造も市場ニーズの発見も社内の根回しも、同じ人間がすべてやってしまい、イノベーションを起こす。
こんなことをやりこなせる人材が企業の中に必ず居るとは限らないが、実際、同書でもレアだと述べている。だからこそ仮にそのようなシリアル・イノベーターが同じ社内に居たとしたら、彼らの行動を阻害せずに理解し、補完する事で共にイノベーションを起こしていくことが望ましい。企業はできればそのような仕組みを整えておくべき。
しかし、同書の中で紹介されている米国企業のケースでもシリアル・イノベーターが組織から危うくはじき出されてしまいかねない状況にまで追い込まれていることが紹介されている。米国企業でさえレアな人材を扱いかねているのに、いわんや日本企業においておや、である。
逆に、日本企業でもとんがった社員の存在を許容し、認め、盛り立てて伸ばすような風土を醸成すれば、どこかに潜んでいるかもしれないシリアルイノベーターが会社をリードしてくれる存在になってくれるかもしれない。そしてそのような企業風土を持った企業が増えれば、日本の企業が競争力を取り戻せるのではないだろうか。長年の不況で余裕を失った日本企業には難しいかもしれないが、ダイバーシティという考え方にも通じるのではないだろうか。
昔の中国の春秋・戦国時代の貴族、君子が、多くの食客を養い、意外な場面で役に立つ、というのとは少し違うけど、そんなシーンがふと浮かんだ。