仕事をやめてフリーな生活を過ごしていた今年の1月から2月にかけて、人生初めての入院と全身麻酔での手術を経験した。 その経験をメモしておく。
きっかけは夏ばての体力低下時の右下奥歯の疼き
昨年早期退職した後、クルーズ旅行したり、各種手続きに走り回ったり、再就職支援会社の講習をまめに受けたりしてひと夏中忙しく動き回っていた。その結果、夏の終わりになると蓄積した疲れで体がだるくなり、右下の奥歯がうずいて我慢できないレベルの痛みとなったので歯医者を受診することにした。
新しく診てもらった歯医者での治療
もともと右下の奥歯は若いときに治療し、神経も処置していたが、当時の処置が不十分だったみたいで歯の根っこの外側に膿がたまっており、ここ数年は疲れたりすると疼いていたのだ。
通っていた歯医者にはずいぶん前から何とかして欲しいと訴えていたのだが、入れ歯にするかインプラントにするしかないと言われ、抗生物質を処方されるのみで治療してもらえなかった。
このため、いっそのこと別の歯医者さんで診てもらおう思って近所に新しくできたところに行ってみた。初診では一通りレントゲン写真を撮ったり、歯の状態をチェックされた。右下の奥歯のところも根管治療の得意な先生のおかげでかなりの時間と費用をかけたものの、何とか抜かずに治療できた。
レントゲンで怪しい影を発見
初診時に撮るようなパノラマレントゲン撮影は通常、同じ歯医者で何度も撮る機会はない。実際、前に通っていた歯医者さんでは初診時に撮ったきりだった。今回、5年ぶりにパノラマレントゲン写真を撮ったところ、左下あご骨の中に埋没している親知らずの横に丸い影が写り込んでいた。何かやばいものが写ってたみたいで先生もうなっていたが、現に痛みを訴えている右奥歯の根管治療をまずは行うこととし、その後で改めて対処することになった。
右下奥歯の処置が終わり、改めて左下あごの疑わしい部分のレントゲン写真を撮ったが、あごの骨の中の丸い影は変わらずしっかりと映っていた。考えられるものとして、エナメル上皮腫か含歯性嚢胞だといわれた。といわれても何?って感じである。自覚症状はまったくないが、いずれも時間が経てばあごの骨を溶かしながらもっと大きくなり、あごの骨がちょっとした衝撃で折れてしまうことがある、といわれて恐怖を感じた。
含歯性嚢胞って何?
結局、歯科医の見立てとしては含歯性嚢胞の可能性が高いということになり、紹介状を渡されて洗足の昭和大学歯科病院の口腔外科で受診することとなった。含歯性嚢胞は埋没している親知らずの歯冠細胞が増殖して形成されるものらしい。生えてこないままの親知らずがこんな悪さをしていたなんて想像もできなかった。 紹介先ではレントゲン撮影のほかにCTスキャンも撮られて自分のあごの骨の中がどうなっているのかを立体的にみることができた。
摘出には大掛かりな手術が必要と聞き、不安になる
口腔外科の先生によると、典型的な含歯性嚢胞とのことで、組織を採取して確定することもなかった。その後、手術で埋没している親知らずと共に摘出するが、全身麻酔で数日間の入院を要すると言われた。手術の際には、手前の奥歯も抜歯することになる可能性もあるという。
ずいぶん大掛かりな手術になると聞き、気が重くなった。担当医は慣れた様子で入院と手術日をいつにするかと話を進め、1月末に入院し、2月初頭に退院する日程が固まった。会社を早期退職し、好きなことをする時間ができたと思ったら、歯の治療に時間をとられ、含歯性嚢胞の入院手術までする羽目になった。
手術後はしばらく硬いものを食べられないと聞いていたので、その前に食べ納めとばかりに香港に行き、マンダリンホテルに泊まって美食と贅沢なひと時を過ごした。今の香港の状況をみると、本当に心が痛む。
初めて尽くしの入院、手術、そして退院
入院初日は何もすることが無く、説明を受けて院内着に着替えて簡単な検査を受けたあとは入浴と食事、読書とPC、ネットで時間をつぶした。手術前から点滴されたが、点滴を受けたのも初めてだ。腕に針が刺さっている状態は不安になる。
2日目は手術日。午後の手術なので、それまでは軽く食事をしたり、読書とPC、ネットで時間をつぶしつつその時を待つ。売店で購入した手術セットを身につけ、看護師さんの案内で手術室に向かう。手術台に横になり、ガスを吸って何か話したような気がしたがすぐに意識がなくなり、気がついたら手術が終わったと声をかけられ、ベッドに体を乗せられて病室に運ばれた。2時間以上経っていた。魔法のようだ。導尿管を入れられていなかったのは幸いだった。
麻酔が残って意識が朦朧とする状態で病室で寝ていたが、摘出した嚢胞と親知らずを持って担当医が病室に来て無事に手術を終えたと説明、記念に血まみれで砕かれた親知らずをもらった。また、ありがたい事に奥歯は何とか抜かずに済ませてくれた。腫れと痛みはそれほどでもなかった。口は少ししか開かない。
その後も麻酔の後で気分が悪く、夕食をパスした。一度トイレに行こうとしたがめまいがして歩けず、看護師さんに車椅子に乗せられて運んでもらった。これも初めての体験。その後は翌朝までずっと眠った。
3日目。お腹がすいたので朝食を食べる。手術後で噛めないのでおかゆや細かく砕いたやわらかいおかずをすするように頂く。手術したところを避けて歯磨きし、うがいをするが違和感が強い。術後の検査を受けて点滴を交換し、薬を飲むこと以外はすることも無く、読書とPC、ネットで時間をつぶす。
朝の検査の際、手術によってあごの骨がかなり薄くなったので、3週間程度はパンの耳よりも固いものを噛まないように注意される。また、親知らずと嚢胞を摘出した後の空洞に長さ1メートルの抗生剤を塗りこんだ細いガーゼを詰めており、それを2週間ごとに交換する際にかなり痛みを伴うと言われた。恐怖した。
4日目 3日目に同じ。退屈。 手術翌日よりも頬が腫れる。
5日目 朝の検査で退院許可が出たので、入院費を精算して帰宅する。この年齢まで大病もせず、大怪我もしなかったおかげで入院や手術とは無縁だったが、やはりできることならば人生の最後のときまで経験せずにいたかった。 頬は腫れたまま。
通院時のガーゼ交換が苦痛
退院後、自宅でも硬いものを食べずに慎重に過ごし、ガーゼ交換のための通院時にいつも痛い思いをし、民間医療保険の請求手続きをしたりした。ガーゼは交換するたびに短くなるが、ガーゼを出し入れする際に歯茎を通る感触がとにかく不快だった。見た目もグロテスクだった。 ガーゼ交換は1ヵ月半ほどで終わった。病理検査の結果を告げられた。嚢胞は良性。
ただ、手術の痕はまだ完全にはふさがっておらず、大きな空洞が空いたままだった。このため食事のたびに食べかすが大量に入り込み、食後にうがいをすると大量の食べかすが出てきて驚かされた。秘密のポケットだ。今では肉が盛り上がって穴は塞がったが、それでも窪みのようになっており、食べ物が嵌まりやすい状態である。歯科医に手術の報告に行き、手術痕の空洞をみせると、良いものを見せて頂きましたとお礼を言われた。
教訓:親知らずが埋まっているなら時々状態を確認をした方がいいかも
今回の一連の治療について、反省点や教訓があるとすれば、次のようなものとなる。すなわち、処置していない親知らずがある場合、数年に一度はレントゲンで状態を確認した方がいいということ。なお、最後の親知らずを抜いた自分は、次回のための教訓にすることはできない。今回は歯医者を変えたことにより偶然発見できたが、そのまま同じ歯医者に通っていたら今も嚢胞が大きくなり続けていたのかも知れず、ぞっとしない。ある日突然、顎の骨が折れて大ごとにならなかっただけでも良かったと思うことにしよう。
