2拠点生活でセカンドライフを楽しく生き抜く

50代で早期退職し、東京と長野で2拠点生活をしています。

「逝きし世の面影」読了

「逝きし世の面影」(渡辺京二著)をようやく読み終えた。単行本で出版されたときに買いそびれ、その後平凡社ライブラリーで出版されたのを入手した。時間ができたときにじっくりと腰を据えて読みたい本だったので、書棚に置いていたら10年以上もそのままになってしまった。今年、人生初の入院というイベントがあったので、そのときに読もうと病院に持ち込んだが結局他の本を読んでしまい、実際に読み始めたのは夏頃になってしまった。結局、今日読み終えるまで3ヶ月以上もかかってしまった。入手時点から数えると足掛け15年以上かかっていると思う。「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイアモンド著)も読み終えるまでにずいぶん時間がかかったが、今回は読み終えたときに達成感だけでなく、幸福感も感じることができる素晴らしい著作だった。

読み始めは文体の言い回しになじめず、読み進むのに苦労した。しかし、内容の深さと一歩引いた視点に立った冷静な筆致に慣れてくると、既に失われてしまった江戸時代に完成された日本文明の有様が、当時の外国人の文献の記述から多角的に浮き彫りにされ、陽炎のように立ち上ってくる感覚を覚えるようになった。

滅びる運命だった文明と言われると、当時の日本に対するなんとも言えない愛しさや懐かしさを尚更強く感じた。失われてしまった事物に対する哀惜の念、かつての美しさの名残を今の世に見出したくなる。もちろん、かつての日本が桃源郷のような手放しで褒められる世界であったとは思わない。光の部分があれば闇もあるのは当然である。白土三平カムイ伝や一連の作品を読むだけでも江戸時代の暗い部分をいやというほど知ることができる。しかしそれでも全てを受け入れて幸せそうに暮らしている日本の人たちの様子を各種の描写から知るにつけ、現代の感覚では決して測れない穏やかな妖精の国を訪れてみたい気持ちになった。

タイムマシーンがあればと痛切に思った。